天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 ねぇ。これって本当に、美しすぎる姉を持った不遇?
 単純に私自身が、詩織ちゃんや他の女性たちと比べて、まったく価値がないだけじゃないの?
『磨いてこそ宝石』って晃さんは言ったけど、私が磨く価値すらない、そもそも宝石ですらない、ただの石ころだったら?

「こんなネガティブ思考、だめだ。もっと自分を傷つけるだけだ」

 そうつぶやいて胸元に手を当て、一生懸命に内側の痛みに耐えながら、指先でエメラルドの指輪の形をお守りのように確かめる。
 でもちょっと傷が大きかったのかな。痛みが、消えてくれないよ。
 でもこのままじゃいけない。溜め息をつくと不幸が逃げていくもの。
 いつも通りにしていれば、きっと前向きな気持ちになれるはず。さあ、平常心に戻らなきゃ!
 ……って、思っているのに。
 せっかくこっちがそう思ってるのに、お偉いさんたちがまたぞろ余計なことをするんだからー!
 なんなのよ!? チラチラチラチラ私を盗み見る、その意味深な視線は!

『この子、傷ついてるかな? 傷ついてるよな? まずいな、絶対これ傷付いてるよ。なんとかフォローしてあげなきゃな。あぁ、この子は傷ついてるな』

 って、あんたらの視線が物語ってるんですけど!
 これ見よがしに目で訴えるな! いっそはっきり口で言え!
 別に悪気じゃないくらい、ちゃんと理解してるってば!
 なのにいつまでも、そんな同情交じりの気まずそうな視線で見られると、余計に惨めになるんですけど!
 中年男ってなんでこうなの? デリカシーがないのって、うちのお父さんだけじゃなかったのね。
 頼むから、浮かび上がろうとする足を水中から思いっきり引っ張らないで!