だからと言うかなんというか、翌日の講習日は朝から気持ちが落ち着かなかった。

 晃さんに会えるのが嬉しいような気まずいような、くすぐったい複雑な気持ちがする。

 ドアから彼が入ってくるのを見た時は、心臓が跳ね上がってしまった。


「おはようございます。聡美さん、詩織さん」

「おはようございまーす。晃さん!」

「おはようございます」


 詩織ちゃんの隣で、素知らぬ態度で頭を下げてご挨拶。

 講習を受けながらチラチラ彼の様子を気にしたけど、晃さんもいつもとまったく変わらぬ講師ぶり。

 それにホッとしたような、逆に物足りないような……。


 そうして無事に今日の講習が終了し、晃さんを詩織ちゃんと一緒にお見送りをしている時、栄子主任から鋭いチェックが入った。

「あら詩織ちゃん! なにその爪は!」


 栄子主任の視線の先には、詩織ちゃんの爪を飾り立てているラメとストーンのキラキラした輝きが。

 実はあたしも今朝から気になっていたんだけど。


「あ、これですかー? 綺麗でしょ? ネイルサロンに行ってきたんですー!」


 詩織ちゃんは両手を見せてヒラヒラ動かした。

 その自慢げな笑顔に対して栄子主任がすげなく切り捨てる。


「落・と・し・な・さ・い」

「えー!? なんでですかー!?」

「あたし達は指先を見られるのよ? もっとそれを自覚しなさい」

「だからわざわざお金かけて、こんなに綺麗にしたんじゃないですかー!」

「あのね、五百蔵宝飾店はどちらかというとご年配のお客様が多いんだから。そんな派手派手な爪に拒絶反応を示すお客様も多いんです」