私は、すぐ横に置いてある姿見をチラッと覗いて自分の姿を確認した。
 ヘアスタイルは、『愛されヘアスタイル』のハッシュタグで検索しまくって選んだ、ゆるふわセミロング。
 ヘアカラーは『今年の愛され色』のピンクブラウン。32ミリのヘアアイロンは必須アイテムで、これがないと生きていけない。
 そして『愛され顔』である童顔に近づくため、アイラインを駆使して必死にタレ目に加工してる。

 でも別段、このヘアスタイルが好きなわけじゃない。
 このメイクが好きなわけでもない。
 このヘアもメイクも、他者からの愛と評価を受けるための手段であり、武器であり、武装なんだ。
 だってこうでもしなきゃ私は……。

「あー! そういえば今日って勉強会の日だったよね!?」

 私のシリアスモードを詩織ちゃんのキンキン声がぶった切った。
 ……ふう。この子ホントに明るいな。人生に悩みなんてなさそう。いいねぇ、軽そうな道のりでさ。

「うん。今日は木曜日だからね」
「やったー! イケメンが来るー! 近藤さんが来るー!」