私の姉は、特筆ものの美貌を持ってこの世に生まれ落ちた。
 一般的にいって、赤ん坊が他人の目から見ても無敵な可愛さを発揮するのは、だいたい生後二~三か月ぐらいからだと思う。
 正直、生まれたての赤ん坊の顔なんて、お猿さんと両生類を足して二で割ったようなものだ。
 なのにうちの姉ときたら、出産時に取り上げられた血まみれスプラッタ状態のときから、輝くほどに美しかったらしい。
 医師も看護師も、産湯に浸からせるのも忘れて見惚れてたって話は、姉の輝かしい美貌伝説の最初の一歩だ。

『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』

 美人を表す日本古来の言葉があるけれど、この言葉がまさに言い得て妙。
 姉はただ立っているだけで、座っているだけで、歩くだけで、もう、息してるだけで美しい。
 彼女は存在そのものが『美』だ。これは言い過ぎでもなんでもない、まぎれもない事実。
 それに対して、この私はというと……。