ちょっと気落ちしながら晃さんの視線をたどると、彼はホテルの前の大きな噴水を見ていた。
 噴き上がる薄い水の壁にライトアップが施され、ユラユラと様々な色に変化している。
 涼やかな水音と、見事な色彩の演出効果に思わず惹きこまれてしまう。

「ほんとだ。すごく綺麗ですね」
「うん。まるでオパールの遊色効果みたいだね」
「ゆうしょくこうか?」
「オパール特有の、あの虹色に輝く現象をそう呼ぶんだ。遊色効果のあるオパールを、プレシャス・オパールって呼ぶんだよ」

 遊色効果のあるオパール?
 つまり、そうじゃないオパールもあるってこと?
 オパールってどれもこれもみーんな、白い地色の中が虹色に光るものだと思ってた。

「遊色効果のないオパールは、コモン・オパールって呼ぶんだ。ありふれたオパールって意味」
「あ、ありふれた?」

 なんかそれって、地味に過酷なネーミングじゃない?
 思わず親近感を感じてしまいそう。コモン・オパールさん。

「ファイヤー・オパールって呼ばれる石があってね、これは地色が赤やオレンジ系のプレシャス・オパールなんだけど……」

 急に晃さんが顔をしかめた。

「遊色効果がないコモンを、色が赤やオレンジだからって『ファイヤー・オパール』として売ってたりするんだよね。本来のファイヤー・オパールって、炎が揺らめくように美しいプレシャスなんだけどなあ」