天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 従業員控室から出ると、栄子主任と詩織ちゃんが心配そうに駆け寄ってくる。

「聡美ちゃん、だいじょうぶなの!?」
「やだ、聡美ちゃん。なんか足もとがフラついてるじゃん!」
「あ、これはだいじょうぶ。いまちょっと雲の上を歩いているみたいで……」
「それは大変だわ! すぐに救急病院に行きましょう!」
「ち、違います。そういうことじゃないですから」

 ひたすら心配してくれるふたりにお礼を言ってから、私は家に飛んで帰った。
 そして夕食も早々に自室へ引っ込み、さっそく服装チェック。

 どうしよう。明日はどんな服を着ていけばいいのかな?
 カジュアル過ぎてもマイナスイメージだし、畏まり過ぎても浮くし。
 ちょっとキチンと感のある、シンプルな薄いジャケット付きの単色ワンピにしようか。
 ……まさか居酒屋とかには連れて行かれないよね? よね!?
 アクセサリーは、プラチナの細いチェーンネックレスにしよう。
 宝石鑑定士さんの目の前で、安物のアクセサリーをゴチャゴチャ身につける勇気はない。
 そもそも私、好きなくせしてジュエリーはほとんど持っていないんだ。
 好きだからこそ、品質にこだわってしまってなかなか手が出せないから。

 明日の服装が決まったところで、お次はお風呂でオイルマッサージ。
 そして二万円する美容クリームをここぞとばかりに塗ったくる。
 美容補助食品を飲みこみ、軽くストレッチをして準備万端、床に就いた。
 やれる事はやった! あとは明日が来るのを楽しみに待つのみ!

 でも……楽しみっていうより、ドキドキして眠れない! あぁ、睡眠不足で肌が荒れるー!