天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

「聡美さん、どうか遠慮しないで。今日のお詫びをさせてください」
「お詫び?」
「そうです。だから、ぜひ」

 あ、そうか。これって私をド突いて転ばしたお詫びなのか。
 なーんだ。ちょっと安心。ちょっとガッカリ。
 そんな複雑な心境に気が抜けて、動悸が少し落ち着いて冷静になった。
 でもやっぱり……ちょっと嬉しい。
 だってこんなイケメンから、一対一のお誘いを受けたんだもの。
 うーんと、こういうときってどうお返事すればいいのかな? 緊張しちゃう。

「じゃあ、あの、遠慮なく……」
「そうですか!? 良かった!」

 晃さんはようやく安心したような笑顔になった。
 爽やか系の威力バツグンの笑顔に、私も照れ笑いで応える。

「それじゃあ俺はこれで。本当に無理しないでくださいね、聡美さん」
「はい分かってます。お疲れ様でした」
「明日、必ず俺に電話くださいね」
「……はい」

 必ず俺に電話下さい、か。
 なんかくすぐったいよ。それって。

 私はニコニコしながら手を振って、晃さんを見送った。
 そして扉が閉まるのを確認してから、飛びつくようにロッカーを開けて中の鏡を覗き込む。
 メイク大丈夫だったかな!? 大事な場面で崩れてなかったかな!?
 様々な角度から顔面をチェックして、ようやく安堵の息をついた。