天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 ひぇぇ。宝石のお手入れって注意が必要なんだ。
 普段はジュエリー専用の柔らかい布で優しく丁寧に拭く程度。そのうちにお店でクリーニングしてもらうってのが、一番安全そうね。

「聡美さん。本当に念のために明日病院へ行ってくださいね」
「はい。なにか異常があったらちゃんと行きますから、もう今回の件は忘れてください」
「いえ。かりに異常がなかったとしても、俺に連絡ください」

 晃さんは私に名刺を渡しながら、驚くべき発言をした。

「明日、一緒に夕食をどうですか? 仕事が終わったら電話ください。俺、迎えに来ますから」

 思わず晃さんの顔を凝視してしまった。
 一緒に食事? 迎えに来る? 
 え? ……えぇ!? そ、それって!?

 心臓がドキドキ不規則に鳴り始め、全身に薄ら汗が滲んで、顔と頭の中がボッと熱くなった。
 どうしよう! デートに誘われちゃった!
 いや、これまでも誘われた回数だけなら、自慢じゃないけど多いのよ!
 だけどそれって、正式にカウントされないお誘いばかりだったから!
 でもこのお誘いは、晃さんは違う。
 警察犬並みの私の嗅覚が、彼はクリアーだと告げている。
 この人はいま純粋に、本当に、『私を』誘ってくれているんだ!