天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 大事な品を、大事な息子の結婚式に身に着けたいわけか。
 そういうことならぜひお手伝いさせていただかないと。

「わかりました。お預かりいたします。少しお時間をいただけますか?」
「ええ、いいわよ」
「詩織ちゃん。お客様をテーブルにご案内してください」
「はい。お客様、こちらでお待ちくださいー」

 詩織ちゃんに案内を任せて、私は器材を用意した。
 主任はいつトイレから出てくるかわからないし、洗浄だけなら新人の私がやっても問題ないでしょ。
 せっかだから機械の力で細部まで丁寧に洗浄してあげたい。
 これは超音波が発する微細な泡で、目に見えない汚れも落とす優れものだ。
 えーっと。専用洗浄液を垂らして、スイッチオンして、ここに指輪を入れて……。
 ちょうどそのとき、視界の端っこで、お店の扉がスッと開くのが見えた。

「お疲れ様です。まだシャッター閉めないんですか?」
「あ、晃さんだー!」

 詩織ちゃんが嬉しそうな声を出す。
 キョロキョロと店内の様子を伺う晃さんと、私の目が合った。