天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 それからもことごとく、私に近づく男はみんな姉目当て。
 いっそ清々しいほどに、ひとり残らず全員私をダシ扱いという結果だった。

 だから学区の中学を卒業して、姉とは違う高校へ進学した時の解放感ときたら!
 これでやっと呪縛から逃れられるって、心の底から安堵したものだ。
 本当に、ホラー映画のラストで最後に生き残った主人公が、光り輝く朝日を拝むような心境だった。

 でも、甘かった……。
 姉の脅威は、新型ウィルスを凌ぐ勢いで広域に広がっていて、私は変わらず『槙原満幸の妹』という事実に苦しめ続けられることになった。

 高校三年間で、どれほどの女子グループから呼び出しを食らったことか!
『この子の彼氏が、あんたのお姉さんに心変わりした! どうしてくれるんだ!』
 って、私には関係もない、どうにもできないイチャモンをつけられる日々。

 大学に進学してからも、状況はたいして変わらなかった。
 でもその頃には、私の嗅覚も警察犬のように精度が増していて、姉目当てで近づく男をヤバイ薬のように感知できるようになっていた。
 経験ってすごい。