天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 叫んだ私はイスを蹴るようにして席を立ち、思い切り足音を立ててダイニングを出た。
 階段を駆けあがり、自分の部屋へ飛び込んで、脱ぎっぱなしの服が置かれているベッドの上にドサッと倒れ込んだ。

「……バカ親父! バカ親父! バカ親父!」

 枕に顔を埋めて、何度も罵倒してうっぷん晴らしをする。
 私に恋人がひとりもいなくて、悪ぅございましたねぇ!
 えぇ、そーですとも! 仰る通り、今までひとりも彼氏なんてできませんでしたよぉ!
 だって、私に近づいて来る男たちは……。
 みーんなお姉ちゃんが目当ての、下心付きの男ばかりでしたからねええ!

 ……昔から私の周囲には、女の子の友達に混じって数人の男の子が必ずいた。
 私は、彼らを大事な友達だと思っていた。
 それに、ひょっとしたら誰かひとりくらい、私にに好意を持っている男の子がいるかも?なんて。
 思春期の胸を、密かにトキメかせていたんだ。