天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 着替えを終えてダイニングに行くと、みんなもう席に座っていた。
お母さんとお姉ちゃんは待っていてくれたけど、お父さんは先にサッサと食事を始めている。
私も席について、揃って食事を始めた。

「お母さん、それ、食欲失せるからどこかへやって」

 お姉ちゃんがテーブルの脇に置いてあるものを嫌そうに見ている。
 それは今どき珍しいお見合い写真だった。

「仕方ないでしょ? お母さんがいくら断っても斎藤さんが持ってきちゃうんだもの」
「私、お見合いなんかしないわよ」
「だから、何度そう断っても向こうが持ってくるのよ」

 斎藤さんは、お母さんの婦人会仲間。
 お見合いのセッティングと仲人を務めることが、生きがいのオバそんだ。
 そのオバさんが、お姉ちゃんの存在を知った途端に、熱い仲人魂に火がついたらしい。

『満幸ちゃんに最高の結婚話をまとめて、私の人生の金字塔にしたい!』

 って宣言して以来、降るように見合い写真と釣書を持ってくる。
 勝手に燃え上がって、人んちの長女を自分の人生の集大成にしないで欲しいよ。まったく。