天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 横から口出しをしてきた私に対して和クンは明らかに不満そうな顔をしたけど、それを見ないふりして私はお嫁さんに向き直り、笑顔で話しかけた。

「こちらのインターナリーフローレスのダイヤモンドをお気に召されましたか?」
「え……あ……はい」
「カラーもDで、最高のグレードです。カット評価も高く、素晴らしい輝きを持ったダイヤモンドです。お客様にお似合いですよ」

 お嫁さんは私の顔を見て、視線を再びインターナリーフローレスのダイヤに移した。
 気になっているんだよね? このダイヤモンドに惹かれているんでしょう?
 だったら手を差し伸べて。
 遠慮だとか、我慢だとか、そんなのぜんぜん必要ないから、素直になっていいんだよ?
 そうだよ。諦めなくて……いいんだよ。

「おいちょっと。こっちは別のにするって言ってるんだから」

 和クンは不機嫌な声でそう言って、お嫁さんの腕を強引に引っ張り、大きなダイヤモンドの方に移動させた。
 ちょっと! 選ぶのはあんたじゃないの! だから余計なこと言わないで!


「宝石は、御本人が自分の目で見て、自分で納得して購入するものなんです」
「だから大きいのを買ってやるって言ってるだろ!?」
「お客様とお母様のご意見はそのようですが、お嫁さんのご意見は違うようですが?」
「なんだよお前、さっきから!」

 険悪な視線を向けられたけど、正面からドンッと受け止め返してやった。
 栄子主任が「聡美ちゃん、やめなさい」って言いながら私を抑えようとしたけど、引く気はさらさらなかった。