天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 栄子主任もさすがにお嫁さんを気の毒に思ったか、助け舟を出した。

「カラットのグレードは下がりますが、一点の曇りもない輝きはエンゲージに相応しいかと存じます」
「なに言ってんの、主任さん。ダイヤモンドは大きさが命でしょ? プロのくせしてそんな常識も知らないの?」

 こいつはまた! 栄子主任を見下すようなこと言って!

「母さん、ダイヤはやっぱり大きいのが一番だよな?」
「そうよ。素人から見れば、しょせん見た目はほとんど変わりないんだし。大きい方が箔がついていいのよ」
「だよな。だから大きいダイヤモンドは高いんだよ」
「萌香さん、遠慮しないで大きいのになさいな」

 そう言われたお嫁さんは、スゴスゴと大きなダイヤモンドを選び始める。
 私は自分の眉間のシワが山脈のようにモリモリと隆起するのを感じた。

 なんで? なんでこのふたり、お嫁さんに自由に選ばせてあげないの?
 そりゃお母さんは、お嫁さんが遠慮しないように気を使ってあげているのかもしれないけど、和クンなんかお金も出さずに口だけ出して、ただウザいだけよ。
 しかもダイヤモンドはデカけりゃいいんだなんて、そんなこと言われたら黙ってられない!

「お客様、ダイヤモンドの価値は大きさだけで決まるものではありません。宝石の価値とは、それだけでは計り知れないものなんです」