「ん? あれ?」
お嫁さんの顔を見ようと壁際から身を乗り出したせいで、うっかり『和クン』と目が合ってしまった。
慌てて引っ込もうとしたけど遅かった。和クンはすぐにピンときたらしくて大声を出す。
「お前、槙原満幸の妹じゃん! なにお前、この店に勤めてんの!? うわ、すっげ偶然!」
和クンが叫び出したせいで、引っ込むわけにいかなくなってしまった。
心の中でゲンナリしながら前へ進み出て、丁寧にお辞儀をしながら挨拶をする。
「いらっしゃいませ」
「なあ、満幸は元気か!?」
「はい」
なんであんたがお姉ちゃんを呼び捨てにすんのよ?
昔の自分の女気取り? お姉ちゃんに相手にもされてなかったくせに。
ムカムカしてる私の目の前で、和クンは自分の婚約者に向かって自慢そうに語ってる。
「こいつの姉貴がさ、すっげー美人なの。昔、まあ、オレと色々あってさ」
いや、ねーよ。なんにも。
一点の雲もない青空のように、爽快なほど何もなかったっつーの。
なに自慢げに嘘ついてんのよ。
「でも結局別れたんだ。だから心配すんな」
だからそもそも、くっついてもいないってば!
どうあっても『槙原満幸はオレの女だった』スタンスを貫きたいらしいわね。
あの槙原満幸が恋人なら、そりゃあ男にとって自慢になるでしょうけど、チンケなプライドね。
それによくまあ、エンゲージリングを選んでいるときに、別の女の話なんて婚約者にできるわね。
お嫁さんの顔を見ようと壁際から身を乗り出したせいで、うっかり『和クン』と目が合ってしまった。
慌てて引っ込もうとしたけど遅かった。和クンはすぐにピンときたらしくて大声を出す。
「お前、槙原満幸の妹じゃん! なにお前、この店に勤めてんの!? うわ、すっげ偶然!」
和クンが叫び出したせいで、引っ込むわけにいかなくなってしまった。
心の中でゲンナリしながら前へ進み出て、丁寧にお辞儀をしながら挨拶をする。
「いらっしゃいませ」
「なあ、満幸は元気か!?」
「はい」
なんであんたがお姉ちゃんを呼び捨てにすんのよ?
昔の自分の女気取り? お姉ちゃんに相手にもされてなかったくせに。
ムカムカしてる私の目の前で、和クンは自分の婚約者に向かって自慢そうに語ってる。
「こいつの姉貴がさ、すっげー美人なの。昔、まあ、オレと色々あってさ」
いや、ねーよ。なんにも。
一点の雲もない青空のように、爽快なほど何もなかったっつーの。
なに自慢げに嘘ついてんのよ。
「でも結局別れたんだ。だから心配すんな」
だからそもそも、くっついてもいないってば!
どうあっても『槙原満幸はオレの女だった』スタンスを貫きたいらしいわね。
あの槙原満幸が恋人なら、そりゃあ男にとって自慢になるでしょうけど、チンケなプライドね。
それによくまあ、エンゲージリングを選んでいるときに、別の女の話なんて婚約者にできるわね。



