天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 ム、……ムカつくーー!
 やっぱり変わってない!
 あの頃のまんま、1ミリも成長してないわ!

「母さん。ホントに母さんっていつもこの店でジュエリー買ってんの?」

 少し離れた場所に立って別のショーケースを見ていた女性が振り返った。


「いやねぇ、和クン、。んなこと言わないの。ごめんなさいねぇ、栄子ちゃん」

 母さん? って、あんた、約指輪買うのに自分のママ同伴か?
 でも栄子主任はさすがにプロで、微笑みをまったく崩さずに余裕で対応していた。

「いえ。こちらこそ大変失礼いたしました」
「いつものクラスのジュエリーを見せていただける? 支払いの方は心配しないでいいわ。これね、私からお嫁さんへのプレゼントだから」

 は!? お母さんが買うの!? 息子のエンゲージリングを!?

 ……ちょっと和クン!(名前忘れた)
 自分が結婚を決めた相手に贈る、自分の愛の証の指輪でしょ!? それを母親に支払わせるわけ!?
 あんたお金たくさん持ってるんでしょ!? いっつも自慢してたじゃないの!
 それを今使わずにいつ使うのよ!

「遠慮しなくていいぜ? なんならこの店で一番高い指輪でもいいからさ」
「この子ったらまたそんなこと言って。いつまでも子供で困っちゃうわ。ホホホ」

 いやお母さん! ホホホじゃなくて!
 困っているくらいなら、ぜひこの息子さんの根性を叩き直したらどうでしょう!?
 それにしたってこんなヤツと結婚する人って、本当にどんな人?

 見れば当然お姉ちゃんには遥かに及ばないにしても、確かに美人。
 お金に釣られちゃったんだろうか。
 でも、なんだかあんまり幸せそうには見えないな。笑顔は笑顔なんだけど、無理して笑ってる感じがするんだけど。