宝石って透明感あふれる色合いで、キラキラと輝く物ってイメージがあるでしょう?
 それが8月に生まれた人は……石担当。
 いや、もちろん立派に価値のある石なんだけどね! 瑪瑙って!
 でもやっぱりダイヤモンドとか、ルビーとか、エメラルドの華やかさに比べると、どうしても地味というかなんというか。

 今でこそ婚約指輪は猫も杓子もダイヤモンドだけれど、昔は女性の誕生石を送る習慣も根強かった。
 片や光り輝くダイヤモンドを送られる女性がいながら、片や……石。

 そういった女性の微妙な心理を上手く汲み取って、颯爽と登場したのがペリドット。
 オリーブグリーンと称される明るい黄緑色の輝きは、悩める若き日本女性を救ったのだ。
 今ではスピネルもあるから、ブルーやレッド、オレンジや紫など選び放題。

 あ、ちなみにイギリスの王冠の一番目立つ中央に輝く大きな赤い宝石、あれはルビーじゃなくて、じつは赤いスピネルだったりする。


「わりと適当なんですねー。宝石業界って」

 目をクリクリッとさせて、詩織ちゃんが屈託なく言うもんだからギョッとした。
 そんな、宝石鑑定士の近藤さんを前にして『適当』って……!