あの事件の夜の闇と、赤く散る血。
　顔を切られた私が連想した因縁深い宝石だ。
　これを晃さんは、いったいどんなつもりで私によこしたんだろう。

「この宝石をお守りにしろって。意味がわからなければ自分で調べろって言ってたわ」
「お守り？」
「イイ男だったけど意味不明ねぇ。何を言いたいのかしらね？」

　それだけ言ってお母さんは部屋から出ていった。
　私は早速、ブラッドストーンを検索してみる。

　ええと、ブラッドストーンはカルセドニーの仲間。
　石英等の非常に細かい結晶が固まった鉱物の変種で、あの赤い色は酸化鉄。
　赤い色が血液を連想させることから、この名が付いた。

　石の歴史は古く、古代エジプトではこの石を粉末状にし、止血剤として用いたという説がある。
　ローマやインドなどでも民間療法でブラッドストーンは用いられ、珍重されたらしい。
　そういった経緯からか、この石はお守りとしても携帯されるようになる。

　晃さんが言ってたお守りってこのことか。
　ブラッドストーンって民間の医薬品としても、お守りとしても重宝されていたのね。
　だからこの石を持てって言ってくれたんだ。

　ええと、なになに？　ブラッドストーンの石言葉は、堅固、勇気、献身。そして……。

「……！」

　私の目は、次の一行に釘付けになった。

『愛を貫き通す勇気を与えてくれる石。あなたを厄災から守り、癒し、心に思う人への愛を貫き通す勇気を与えてくれるでしょう』

　晃さん。これって……?