その翌日から私は仕事を休んだ。
　事件を知った栄子主任と課長が、お見舞いを持って自宅に駆けつけてくれて、休養するよう勧めてくれたからだ。

「ゆっくり休んでね。聡美ちゃん」
「君がいないと寂しいが、また元気に出てきてくれるのを楽しみに待っているよ」

　そんな優しい言葉をかけられて、深々と頭を下げたけれど、でもどこか他人事のようにも感じていた。
　当然メイクをしていない素顔をふたりに見られたけれど、別段なにも感じない。
　逆にそれが、私にとっては普通じゃないことなのかもしれないけれど、もう、どうでもよかった。

　それに私、このまま五百蔵宝飾店に勤め続けていいんだろうか。
　お店側の心遣いはとてもありがたいけれど、正直、美しい宝石を売る店員の顔がこれってどうよ？
　さすがにお店側はそんなこと言い出せないだろうし、ここは自ら進退を申し出るべきじゃないだろうか。
　はーっ。これのせいで失職かあ。

　毎日傷を洗ってパッドを取り換えているけれど、傷口は自分の目では確かめていない。
　いつもお母さんにお願いして張り替えてもらっている。
　失う物全部を失ってもう世の中怖いもん無しだー、なんて思っていたけど、傷を見るのはやっぱり怖かった。
　だからというわけでもないけれど、あの日以来、私は部屋に引きこもっていた。
　この顔を見れば、家族みんながますます私に気をつかってしまうし。