天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

「晃さん」

 私は次に晃さんに向かって話しかけた。
 彼は真剣な表情のまま瞬きもせずに、私を見つめている。

「紹介します。私の姉です。驚いたでしょう? あんまり綺麗で」
「聡美さん……」
「もう解ったでしょう? 晃さんが知りたがっていた、私の中の隠しごとが」

 気がつけば私は、柔らかく微笑んでいた。
 べつに何が楽しいわけでもなく、なにが嬉しいわけでもない。
 ただ、気が抜けたように安心していた。
 いつかはバレる、きっとバレると恐れながら、ずーっとずーっと怯え続け、隠し続けていた。
 ああ、でも……。
 もう……怯えなくてもいいんだ……。

 こうして目の前に並んでいるふたりを眺めながら、思う。
 本物を追い求める者と、紛れもない本物が出会うことは、きっと決められた運命だったと思う。
 なるべくしてこうなったんだ。私がずっと邪魔しちゃってたけど。
 これは天罰かもしれない。
 イミテーションのくせに本物のフリして、優しい晃さんを偽っていた罰。
 もっと早くに自覚していれば、こんな目に遭うこともなかったろうに。
 自分が恐れていた最悪な状況よりもなお酷い状況を、自分で招き寄せてしまったんだなぁ。

 そんなことを淡々と思いながら微笑む私と、表情の動かない晃さんは、じっと見つめ合う。
 しばらくして、やっと晃さんの唇が動いた。

「……わかった」

 彼はそのひと言だけを言い、私は再び微笑んだ。
 そして彼に向かって深々と頭を下げる。
 これまで彼が見せてくれた夢に対しての、大きな感謝と、謝罪を込めて。