あたしは両目を大きく見開き、思わず彼を凝視した。

 好きな、女って、いま言っ……?


「ああ、俺はキミが好きなんだよ。好きだから誘ったし、好きだから電話したし、好きだからキスしたかった」

「…………」

「俺は、キミの事が好きだ」


 好き? 好き?


「好きだから、とても納得できない。説明してくれ」


 ああ、この人は……。

 本気で言ってくれている。あたしが今まで、偽りでしか聞いたことが無かった言葉を。

 ずっと望み続けてきた、好きだという、本心からの言葉を。


 あたしの目と鼻がジワジワと熱くなり、瞬きを忘れて渇いた目がジワリと潤んだ。

 熱くて大きな塊が体の奥底から込み上げてくる。

 こんな感覚は生まれて初めてだ。まさか本当に、誰かに言ってもらえる日が来るなんて。

 好きって言葉は、こんなに嬉しくて素晴らしい言葉だったんだ。

 こんなにこんなに、嬉しくて……。


 こんなにこんなに、たまらなく辛くて悲しい。


 ますます目と鼻が熱くなってどんどん湿ってくる。

 グスグス鼻を啜って、涙が零れないように上を向きながら目を閉じた。

 そして心の中で彼に話しかける。


 あのね、晃さん。あなたの目は騙されているんだよ。

 その想いは本物じゃないの。偽物なの。イミテーションなのよ。

 だから、手を伸ばしてはいけないの。あなたが後悔してしまうから。


「俺の目は確かだし、俺は本当にキミが好きだよ」


 上を向いたあたしの目が再び見開かれる。


「前にも言ったろ? キミの考えている事、なんとなく伝わってくるんだ」


 晃さんはまるで怒っているような強い口調で言葉を続けた。


「キミも俺の事が好きなんだろ? それは絶対に間違いない」