天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

「私たちも近藤さんのこと、晃さんって呼びますから。遠慮しないでいいんですよー?」

 あのね、詩織ちゃん。あなた基本的に『遠慮』の意味をよくわかっていないと思うの。

「ねえ、聡美ちゃん! 私たちだって堅苦しくない方が嬉しいよね!?」

 あのね、詩織ちゃん。『私たち』って、勝手に仲間にしないで欲しいの。
 うーん、どう言えば場を悪くせずに諭すことができるだろう。
 詩織ちゃんて注意されると、脊髄反射で反発するタイプだからなぁ。
 悩んでいる私を見た近藤さんが、詩織ちゃんにふわりと笑顔を向けた。

「じゃあ、遠慮なく。聡美さん、詩織さん。今日もよろしくお願いします」
「はーい、晃さん! うふふ」

 明るく笑う詩織ちゃんに、近藤さんもニコリとした。
 私は、気を遣ってくれた彼に対して申し訳なく感じたけれど、自分の意見が通った詩織ちゃんは見るからに上機嫌だ。
 悪い子ではない、とは思うんだけれど、なんなんだろう?
 この『私に親しげに振る舞われて、嬉しくない男がいるはずがない』的な、絶大な自信は。
 自分の発想や行動の全部が、周囲に容認されると信じて疑ってもみないんだろうな。