天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 せっかくの彼からのアプローチを、私が迷惑がっているように思われていたらどうしよう。
 彼にソッポを向きながら、心はひどい焦燥感に駆られる。
 どうか気付いてほしい。いつものように私の心を読んで欲しい。
 こんな態度をとってはいても本心は正反対なんだって。
 どうかお願い。私の心を察して……。

 そんな痛いほどの葛藤に翻弄されていると、テーブルにグラスが運ばれてきた。
 チラッと目に入ったそのグラスの中の色彩に、一瞬状況も忘れて目が釘付けになった。
 なに、これ!?

「失礼いたします。プースカフェでございます」

 プースカフェ? それがこのカクテルの名前?
 食い入るようにカクテルを眺める私に、晃さんが明るい声で話しかけてくる。

「聡美さん、このカクテル見るの初めて? 面白いだろ?」
「は、はい。初めて見ます!」

 赤、緑、無色、紫、黄色、青、茶。
 七色のお酒がクッキリと、まるで地層のように完全に分かれているカクテルだった。