天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 ドキンと激しく心臓が高鳴った。
 この気持ちをごまかすように彼の顔とワイングラスを見比べたけれど、いつまでも彼にグラスを持たせたままでいるわけにもいかず、受け取った。
 私がワインを飲むのを待ち構えているようにこっちを見ている彼を見ながら、オロオロするばかり。

 よ、酔わせるって、酔わせるって、そんな。
 そ、そんなことに……。
 そんなことになったら、メイクが崩れちゃうんだってば!

 だいたい、なんでそんなに私を酔わせたいわけ!?
 お酒の席で、男が女に対して『キミを酔わせたい』なんて簡単に言わないでよ!
 酔わせてどうするつもりなんだっつーの! それって卑怯でしょ!?

「うん。俺って結構ズルい男だよ?」

 晃さんがソファの背もたれにヒジを乗せ、首を傾げてニコリと笑う。
 ま、また心を読まれた!
 彼は足を組み、ロックグラスを唇に運んでクィッと傾ける。
 アルコールのせいか、いつもよりもずっとくだけた感じがするのがすごくカッコ良くて、色っぽくて、私の心拍数を上げている。
 だから汗が顔に……。あぁ、メイク崩れる崩れる!

「でね、アメジストの話に戻るんだけど」

 戻るんかい! いきなりここで真面目な講義に戻りますか!?
 こっちの心境、一切お構いなしですか!?

「アメジストは熱や光で退色するって言ったろ? 黄色に変化するんだ。そしてさらに高温で熱し続けると、色が完全に抜けてしまう」


 だから紫水晶のアメジストを加熱して、黄色っぽく変色させ、手に入りにくい黄水晶のシトリンとして販売していることがある。
 または無色の水晶に放射線を当てて黄色に変色させ、シトリンとして販売するケースもある。