大学イベントの真夏のスポーツ大会で、大汗をかいてシャワーを浴びた時もメイクだけは落とさなかった。
仲間と旅行に行って温泉に入ったときも、メイクだけは落とさなかった。
眠るときだってフルメイクのままで、寝起きの化粧崩れ防止のために、布団に入る前に丹念に重ね塗りする用心深さだ。
そんな、死角も油断も一切ない私の日常生活からついたあだ名が、『鉄仮面』。
だってメイクは私の防御壁なの。
これを剥がしてしまったら、私の心を守る物はなにひとつ無くなってしまうんだもの。
あの美しい姉の威光にさらされて、私の心は今度こそ完全に砕け散ってしまう……。
――ガチャ。
扉の開く音がして、詩織ちゃんの顔がパッと輝いた。
そして『もうあんたとの会話なんざ、どーでもいいわ』とばかりに、入室してきた相手に挨拶をする。
「近藤さーん。おはようございますぅー」
「おはようございます」
入り口で軽く頭を下げた近藤さんは、笑顔を見せた。
無理に手を入れていないナチュラルなヘアスタイル。カラーも自然な黒。
彫りが深くてはっきりした目鼻立ちは、意志の強さを感じさせるけれど、全身が醸し出す雰囲気はとても穏やかだ。
仲間と旅行に行って温泉に入ったときも、メイクだけは落とさなかった。
眠るときだってフルメイクのままで、寝起きの化粧崩れ防止のために、布団に入る前に丹念に重ね塗りする用心深さだ。
そんな、死角も油断も一切ない私の日常生活からついたあだ名が、『鉄仮面』。
だってメイクは私の防御壁なの。
これを剥がしてしまったら、私の心を守る物はなにひとつ無くなってしまうんだもの。
あの美しい姉の威光にさらされて、私の心は今度こそ完全に砕け散ってしまう……。
――ガチャ。
扉の開く音がして、詩織ちゃんの顔がパッと輝いた。
そして『もうあんたとの会話なんざ、どーでもいいわ』とばかりに、入室してきた相手に挨拶をする。
「近藤さーん。おはようございますぅー」
「おはようございます」
入り口で軽く頭を下げた近藤さんは、笑顔を見せた。
無理に手を入れていないナチュラルなヘアスタイル。カラーも自然な黒。
彫りが深くてはっきりした目鼻立ちは、意志の強さを感じさせるけれど、全身が醸し出す雰囲気はとても穏やかだ。



