「わ、私のことって」
「今頃多分章太が慰めてるさ。章太、本当は菜々子に惚れていたから。俺がここに戻って今日の経緯を軽く話したら、飛び出して行ったしな」
「でも星也、このままだとずっと彼女できないじゃない」

 戸惑いを見せる彼女に、星也は少しずつ歩み寄っていく。

「俺にはお前がいるから。俺は正直、お前と一緒にいる方が仕事もはかどるし、楽しい」
「だ、だけどっ、私と星也はまだ全然付き合ってなんか」

 そんな彼に怯みつつ美森は、少しずつ後ずさっていく。

「付き合ってたさ。今までの人生の中で必ず側に美森、お前がいた」
「でもっ、単なる幼馴染だったからじゃ」
「それはもう無理かも知れない」
「えっ、でも」
「俺にとってはもうお前は単なる幼馴染じゃない。女としてしか、美森を見れない。お前はどうなんだ美森」
「私は、私も、せ、星也のことは嫌いじゃないけど」

 ついには壁際まで星也に追い詰められる美森。

「それは好きって意味で解釈してもいいんだな」
「う、うん。って言うかただの好きじゃなくて、何ていうかそのっ」
「だったらそれで十分だ」

 星也は言いながら美森の右脇に片手を壁に突くと、追い詰められて身動きが取れなくなっている美森へとそのままキスをした。
 思わず目を見開く美森。
 最初は驚きを隠せなかった美森だったが、繰り返される星也からのキスに次第に脱力していくと、やがてそのキスに甘えていった。
 ある程度キスを続けると、唇を離した星也におずおずと美森は訊ねた。

「じゃ、じゃあ、もし今後恋愛対象として万が一別れたら、もう今までみたいに幼馴染としては付き合えなくなるのかな」
「いや、俺とお前が別れることはない。もしそうだったら、幼馴染もしていなかっただろう」
 
 これに美森は、はにかむような笑顔を見せた。



 一年後、章太と菜々子は結婚した。

「菜々子、章太、結婚おめでとう」

 バージンロードから仲良く腕を組んで出てきた二人に、美森が大声で声をかける。
 するとブーケが美森に投げられた。
 ブーケをキャッチしながら戸惑う美森。

「次は美森の番だからね。星也さんと幸せになるのよ」
「菜々子、ありがとう」

 美森は星也の隣で紅潮しながらも、満面の笑顔を浮かべる。
 まるで友情と結婚を祝福するかのように、ウェディングベルが鳴り響いた。


 END