1.あなたがいる世界






「どちらかしか、生きられません。」







5年前、俺は人生でおそらく最大であろう決断をした。


悩みに悩んで、やっとやっと出した答えに自信なんてなかった。


それでも、選んだのだ。





きっとこれが正しい選択なんだと、何度も何度も言い聞かせながら。


潰れそうな自分を抑えて、振り絞るように声を出した。






「あかりを助けてください。」







白髪混じりのメガネをかけた長身の医者は頷き、扉の奥へ消えていった。