「愛さーん!点滴変えようね!」
化粧して、着飾った若い看護師がそう言って、笑いかける。
そんな顔見てると、なんか無性に腹が立って、私は無言を貫いた。
膨れツラで、冷たくあたり、周りからは、『可愛くない』、『無愛想』。
なんて言われてた。
ウザくてウザくて、また転院しようと思った。
けど、突然担当の看護師が変わった。
それが、さやかだった。
さやかは私の性格をよくわかってた。
何気に化粧してないのに綺麗で、気が良く回る。
患者じゃなく、普通に接してくれるから、なんとなく、楽だった。
「さやかってさ…私を嫌いじゃ無いの?」
いつか、そんなことを聞いたことがある。
みんなから言われてたことだ、さやかがそう思ってても不思議じゃ無い。
けど、さやかはなんともないように言った。
「嫌だったら、私は即担当代わってもらってるから。」
サラッとそんなこと言える人は珍しいと思う。
少しだけ尊敬した。
こんなこと言うと調子に乗るから、絶対に言わないけど。
さやかは私の心の隙間にほんの少しだけ手を入れて来た。
けど、そこまで。
それ以上は、さやかも入ろうとしなかった。
そういやつなのだ。
基本面倒なことは避ける修正があるのだろう。
さやかだって人間なのだから。
面倒なことは避けたい、人間として当然のこと。
けど、私はそんな関係でよかった。
正直このまま死んでも別にいいかと思うほど、結構ここが居心地の良いものになっていた。
だから、このままで居させて欲しかったのだ。
なんともなく、あと何年かここにいさせて欲しかった。
できればちょっとお酒飲んだりとかもしたかった。
それの夢が壊れたのは、今からほんの一週間前のこと。
それは当然の宣告だった。