「そう、それでね、あの人がなかなか老けちゃって…」


「それはお気の毒ね〜」







なんだこれ、ただの
主婦会みたいなもんだろ。


何もすることがなく、
ただただ横で2人の話を聞いているだけだった。





なのでリビングをキョロキョロと観察していると、急に俺の話題に変わった。









「柊一郎君はね、
よくこの家に遊びに来てたのよー。
覚えてないかな?」



そう聞かれたが、やはり覚えていないため、静かに頷く。






「一応本人にも、こういう事情があって記憶を失ったっていう話はしていたの。
それでどうしたら記憶が戻るか、お医者様に聞いたら、やっぱり昔住んでいた場所にまた戻ってみることが
一つの解決策になるかもって。

だからまた戻ってきたの」


「そうよねー。あの時は、
杏菜にもダメージがあったらダメだからって理由で引き離す形になっちゃったんだものねー。
そう簡単に記憶は戻らないものね」





深刻な話をされているが、

何も覚えていない俺にとって
どう言われても何も思わなかった。




てか、杏菜って名前も聞いたことあるな。





あんな、あんな。





あ、あんこだ!

甘そうな名前のやつがいたな!!






そうひらめいた瞬間に、
リビングのドアが開いた。