君が私を思い出せなくても。




*柊ちゃんside*








あいつ、何なんだよ。




朝から突っかかってくるし、
さっきもあんな感じだし、
いきなり過ぎだろ。


てか、“柊ちゃん” って呼ぶ女、
あいつ以外にもいたような気がする。




なんでそんなことがわかるのかは
自分でもよくわからないけど
“柊ちゃん” って呼ばれてちょっと反応した。



まっ、そういう失くした記憶を思い出すために、またここに戻されたんだしな。





いきなりこんなことになって
わけわかんねーけど。






「柊!こっちこっちー♪」



ノリノリで手招きする俺の母親、
水野百合子(ミズノ ユリコ)。
いわゆる、年齢の割りに若作りしているので少しきゃぴきゃぴしている。
よりによって、今日のファッションは
白ワンピースを着て麦わら帽子を被っている。





「なんだよ、恥ずかしいから話しかけんなって」


「もぉ、相変わらず冷たいんだからぁ!
ほら!明日遊びに行くって話したお家はここよ♪」




そう言って母さんが指を差す方向を見ると、青い屋根の草木に囲まれたキレイな家があった。

表札には “大崎” の文字。




どっかで聞いた苗字だな。

……まぁいっか。