君が私を思い出せなくても。










10年前の夏、8月8日。

私と柊ちゃんが5歳の時。



この日の出来事は忘れもしない____











「あーーんちゃぁーーーーん!!!」


「うぎゃっ!!しゅ、柊ちゃん…重いってばぁ!」




重たい物体が寝ている私の上に乗ってきた。

そのため、私の発した女の子らしくない声を、ケラケラと横で笑う大好きな人。




彼の名前は水野 柊一郎(ミズノ シュウイチロウ)。

生まれた病院が同じで、家も近所のため、私だけが柊ちゃんと呼んでいる。




杏ちゃんと呼ばれているのは、
私の本名が大崎 杏菜(オオサキ アンナ)だから。

そう呼んでくれるのも、柊ちゃんだけ。





「それより、急いで部屋に入ってきてどうしたのー?」


「今日も晴れたよ!サッカーしにいこ!!早く着替えて!!」





笑顔で私の手を引っ張り、
ベッドから無理矢理起こされた。


そして、動きやすい服に着替えて
お母さんが作ってくれていた朝ご飯を
一緒に食べた。