「あの・・・。葛巻さんて意外に面倒見いいんですね。」

本田再度鼻をかみながらつぶやく。

「意外にって失礼な!あたしゃ、このマンションの管理人として、住人の面倒は見てきたつもりだよ。あんた、知らなかったのかい?」

「はい、知りませんでした。」

がくっ。

葛巻さんずっこけた。

「あのねえ、本田さんが知らないだけでおせっかいなくらい面倒見がいいって言われてんのよ!」

「はあ。」

「今はもういないけど、庄司さんのこともよく面倒見てあげたわよ。あの子、田舎から出てきたばかりの頃ホームシックになっちゃってね。あたしが煮物作って食べさせたり、愚痴聞いてあげたりしてたのよ。」

「そんなことがあったんですか。」

今日を境に葛巻さんを見る目がまちがいなく変わるだろう。

本田は今までの葛巻さんに対する評価がまちがっていたと恥じた。

「まだ本田さんがこのマンションに来る前の話だからね。あんたも知らないだろうけど。」

葛巻さんは少し顔を赤らめて、視線を外した。

そして腰を上げながら、

「また何かあったら相談においでよ。」

と、言った。