ヴェルト・マギーア ソフィアと黒の魔法教団

部屋に月の光が差し込んで、私たちを照らす。

「お前は、何も変わるなよ。お前は…、お前のままでいろ」

言葉の意味が分からなかった。

だけど、アレスの声音は、とても優しかった。

「私は私だ。何も変わらない」

「ならいいけど」

「じゃぁ、あの契約書に私から一つ付け足しだ」

「はっ?」

私は、アレスの顔を見上げる。

「助手が変わったら、上司が助ける。上司が変わったら、助手が助ける」

「な、何だよそれ」

アレスは、苦笑した。

「私がもし変わったら、お前が私を止めろ」

アレスは、再び真剣な表情へと戻る。

「必ず止めてやる!」

な、なんか改まって言われると調子が狂う。

少し冗談半分で言ったところもあったんだけどなぁ…。

「だ、だから…、そろそろ離せ!」

「あっ!わ、悪ぃ!」

アレスは、急いで私から離れる。

(何だ……?)

私は、さっきから胸が痛かった。

それに、何故か心臓の鼓動も早い気がした。

(こ、これはきっと熱のせいだ!急に抱きしめられて、熱が上がったんだ!)

私は、自分にそう言い聞かせた。

「スープ…、ありがとう!本当に美味しかった…」

「ど、どういたしまして…」

私たちの間で、変な沈黙感が起こる。

先に言葉を切り出したのは、アレスだった。

「それじゃぁ、俺戻るな」

「え?こんな時間からか?」

「お前の体調もいくらか良くなったしな、また明日来るよ」