ヴェルト・マギーア ソフィアと黒の魔法教団

「俺の母様のロゼが奪われたんだ」

「えっ?!」

思ってもいなかったことをアレスは言った。

そこで私は、お母様の顔が浮かんだ。

朧気にしか浮かんでこないが…。

「そのお母様は大丈夫なのか?」

「今のところは、でもあと七日経ったら母様は死ぬ」

父親の存在を聞こうとしたが、私は聞くのをためらった。

「女手一つで俺を育ててくれた。だから、俺は母様を死なせたくない」

私は内心ホットした。

父親のことを聞かなくてよかったからだ。

アレスの言ったことからして、父親がどうなったのか何となく予想がついた。

ここで、私は決心した。

「なら私は、お前を手助けする」

「お前が?」

アレスは、驚いて私を見てくる。

「あぁ、正直お前の力などにはなりたくないが」

「正直に言うなよ、色々と台無しだぞ…」

「別にいいだろ!私は、母親を死なせたくないというお前の気持ちに、私も賛成しただけだ」

「そうか、ありがとな」

アレスは、優しく私の頭を撫でてくれた。

「さ、触るな!」

「素直に撫でられてろ!」

「うるさい!」

アレスに撫でられた時、懐かしく感じたことを、絶対こいつには言えない。