【ソフィア】

あの事件から一週間が経った。

黒の魔法教団を率いていたサルワは、フィアに連れられて魔法警察に捕まった。

もちろん、団員たちも捕まり、黒の魔法教団はなくなった。

幸福の星屑(ハピネス・アマ・デットワール)によって、ロゼはそれぞれの持ち主の中へと戻った。

アレスのお母さんの中にも、ロゼは無事戻った。

私は、こっちに帰ってきて直ぐに倒れた。

そのせいなのか、あの日の事件を、私はあまり覚えていなかった。

だが、記憶がなくとも私は自分がしたことを考えると恐怖に襲われた。

人を殺そうとしたのだ。

アレスは、私に簡単に説明してくれた。

お前は、ロゼの力で暴走したんだと…。

もちろん、アレスの言葉はちゃんと理解している。

だが、あの事件をきっかけに私はある違和感を覚える。

私の中には、もう一人のわたしが居るのではないかという違和感。

きっと、それは表に出してはいけないものなんだろう。

「はぁ……」

私は、深い溜め息をつき本を閉じた。

私は、病室から外を見つめる。

倒れた私は、この病院へと運ばれた。

どおやらここは、フィアの家の病院らしい。

フィアやロキには世話になったし、今度何かお礼をしないといけない。

窓の隙間から、風が吹き込み私の髪をなびかせる。

あの時、アレスが私の名前を呼んでくれなかったら、私はどうなっていたのだろうか?

力に飲み込まれ、私という人格はなくなってしまったのかもしれない。

それに、アレスの前であんな子供みたいに泣きじゃくるなど…、恥ずかしかった。