【アレス】

「炎の玉(フィアーボール)!」

俺は、目の前に待ち構えている団員達に炎の玉を投げる。

「氷の拳(グラースフィスト)!」

「焔の翼(フレイムエール)!」

三人の魔法が一気に団員達を吹っ飛ばす。

「これじゃあ拉致がないなぁ」

「どんどん来るわよ」

テトは俺の肩に、ムニンは俺の頭の上に乗っている。

「アレス、あれを見て!」

テトの指を差す先に、俺達は視線を向けた。

「な、なんだあれ?!」

屋敷の上の部屋から、禍々しいオーラが漏れていた。

「まさか、儀式が始まったのか?」

「アレス、急がないとやばいぞ!」

「だけど…!」

この人数の団員を全員相手にするのには、時間がかかる。

「アレス達は先にいって!」

「フィア?」

「ここは、私とロキで充分よ」

フィアは、剣を空へとかざす。

「我剣、サファイアに秘められし力よ、氷の精霊よ、その力を一つとし、地平を凍らす力を我に授けたまえ!」

サファイアは、青白い輝きを放つと、冷気をまとう。

「絶対零度(ゼロアブソルート)!!」

フィアは、地面にサファイアを差し込む。

そこから冷気が放たれ、絶対零度は団員達を氷漬けにした。

「流石氷結の魔道士。超上級魔法の絶対零度まで使えるなんて」

「早く行け!」

「ここは、俺達でなんとかする」

「ありがとう!」

俺は、氷漬けにされた団員の横を通っていく。

だが、まだ沢山の団員達が俺を待ち構えていた。

「フィアだけかっこいい所持っていかれてたまるか!」

ロキは、胸の前で印を結ぶ。

「鳳凰の聖域より来たる焔の精霊よ、汝その力を我に貸し与え、地平を焼き尽くす力へと変えよ!」

ロキの後ろに鳳凰が現れる。

「鳳凰の咆哮(フェニックス・ルジート)!!」

鳳凰は、大きく羽ばたくと、こちらに咆哮を放った。

「ちょ、ちょっと待て!」

俺達だって居るんだぞ!

「たく、仕方ねぇ」

ムニンは、地面へと降りると、小さな姿から大きな狼の姿へと変える。

「ええええ!お前大きくなれたのかよ」

「話は後だ!」

ムニンは、服の襟元を噛み大きくジャンプする。

「うわぁ!」

「このまま突っ込むわよ!」

「まじかよ!」

「アレス、覚悟を決めろよ!」

「ちょ、まっ!」

俺が言葉を発する前に、ムニンはステンドグラスへと突っ込んだ。