ヴェルト・マギーア ソフィアと黒の魔法教団

「それで、奴らの居場所なんだが。ここから少し離れたあそこの山が見えるか?」

アレスの指さす方を、私は目を向ける。

「あの山は…」

確か、忘却の山だっけ?

忘却の山と呼ばれるのは、名のごとく入った者の記憶を奪うからだ。

しかし、そうなると奴らの記憶も消えるはずだが…。

「あの山の由来は、知っているよな?」

「あぁ、忘却の山。行きたくないところだな」

白い靄が山頂にかかっていて、不気味に見える。

「でも、奴らはそこにいる」

私は、さっき浮かんだ疑問をぶつけてみる。

「あの山にいる確率は低いぞ、忘却の山に入ったものは、記憶を失うんだ。いくら奴らでも、記憶を失う山なんかに行くか?」

「それが、その記憶を失わない魔法があったらどうする?」

「記憶を失わない魔法だと?」

そんな魔法があるのか?

「これは、禁断の図書室で分かった。教団は、記憶(メモリーズ)を使っている」

「記憶?」

「記憶は、相手の記憶を変えることができる。もちろん、自分の記憶も保存出来る」

もし本当にその魔法が使えるなら、あの忘却の山にいる確率は高くなる。

「でも、私たちではそこへ行くのは難しいぞ」

「だから、奴らの魔法を使うんだよ」