「やった!鮎川さんっていい人だね。」

・・・いい人、か。

私は多分、一生いい人にはなれないんだろうな・・・。

私の生き方はまるで、ずる賢いキツネのようなものだから。

いい人には、ほど遠い。

「別に。一緒に食べるような人が居なかったから。」

いじめられてるワケではない。

話しかければ、笑顔で話してくれる子達もいる。

でも皆、どこか他人行儀で。

その時、その瞬間に『ああ、溝は埋まらないんだな』って思う。

だから当然、一緒に昼食を食べようと誘ってくる人はいない。

私自身も、別に一人で食べることに抵抗はない。

だから、及川君の誘いは意外だった。

でも、断る理由もなかった。

ただそれだけの事で承諾したのに、“いい人”と呼ばれるのには抵抗がある。

「そうなんだ。じゃあこれからは一緒に食べよう?」

「・・・同情してる?」

私がそんなに、可哀想だと思った?

一人で昼食を食べているから?

お姉ちゃんが死んだから?

・・・同情なんて、まっぴらだ。

「違うよ。俺が一緒に食べたいだけ。それじゃあ、理由にならない?」

「っ!いい、けど・・・。」

天然か計算か、よく分からない。

けれど、不意に眉を下げた及川君の顔が子犬と重なり、不覚にもドキッとした。

「ありがと。鮎川さん。」

「・・・別に。」

・・・私、及川君苦手かも。