「及川は・・・男子の一番前だな。男子の列一つずつ後ろにズレてくれ。」

先生のお願いに、『はーい。』と気だるそうな返事をする男子たち。

まあ、いきなり席替えするようなもんだし、机移動させるのめんどくさいだろうしね。

「始めまして。」

「っ?!」

急に横から声をかけられた。

・・・びっくりした・・・。

だって、普段声をかけられることなんてそうそうないし。

「俺、及川祐。よろしく!」

ニッと歯を見せて笑う及川君は、少し予想外だった。

もっと、おとなしい人だと思ってたから。

「始めまして。鮎川夕日、です。」

あ、今気づいた。

「・・・名前、似てるね。」

あ、及川君も気づいたんだ。

「そうだね。」

なんか、変な感じ。

今まで名前が似てる人と、そんなに会ったことなかったし。

「何か、鮎川さんとは仲良くなれそうな気がする。」

え?

何で?

「はぁ・・・?」

名前が似てるだけで仲良くなれる物なのか?

というか、仮にそんな気がしたとしても、普通言わないでしょ。

しかも本人の前では。

「ねぇ、昼ごはん一緒に食べていい?」

・・・どんだけグイグイ来るんですか。

「いいけど・・・。」

何か、最初の好青年みたいなイメージとはかけ離れてる気がする。

多分及川君は、変わった人なのだろう。