「お父さんは?」

『お父さん、すっかり信じちゃってるから話合わせるの大変よ。お願いだから、外国のおみやげなんて買ってこないでよ』

そうだった、いとこの家に行ってることになってるんだった。

私は肝に銘じてうなずいた。

しばらく話していると、隣の部屋の扉が開く音が聞こえた。

「お姉ちゃん帰ってきたみたい。早番だって言ってたけど、早いなぁ。じゃあもう、切るね」

『果凛に代わってちょうだい』

お母さんがそう言うのを聞こえないふりして、
「バイバーイ」
と、電話を切った。