お客さんが、我先へと逃げてゆく。
それを見て太った男が満足げに笑った。

男と目が合う。

思わずそらした私の目に、若い男がメオに詰め寄るのが見えた。
なにかをメオの耳元で言うと、彼女は早口で言い返した。
その声には勢いがなく、ソムチャイが受け継ぐように声を荒げた。

しばらく沈黙。

太った男が、あごを動かして合図すると、ふたりは店からゆっくりと出て行った。

「だ、大丈夫!?」

呪縛が消えたかのように、ようやくふたりのもとに駆け寄る。

うつむくメオの目に涙がこぼれていた。
ソムチャイは、男たちの背中をにらみつけている。