ベンチに戻って、飲み物の入ったコップを持ちながら、人が少ない木の下の日陰に座った。
「……疲れた…」
サッカーはすごく楽しいけど。
体力のないわたしにとって、みんなより疲労が大きいのかな。
「お疲れさま」
え…?
「頑張ったじゃん」
体育座りをして俯いていたけど。
聞き覚えのある声が聞こえて、わたしは顔をあげた。
「…あ…、城川くん」
「ちゃんとボール扱えてたし」
「ありがとう…!」
すごく疲れてたけど。
城川くんの顔が見れて城川くんと話せて、少し元気が出た。
「後半の30分、かなりキツいだろうけど。 藤宮らしく諦めねぇで頑張れよ」
「うん…っ!」
最後まで諦めたくない。
運がいいことにいま【1対0】。
このまま守り抜くか、点数を入れるかしたら…勝てる。
「俺らの高校は体力がないから。
後半の中での最初のうちに行動するしかねぇと思う」
「…そっか」
「でも、もしも相手に点を取られても。
諦めなければいいと思う」
「うん」
「ふ、頑張れ」
笑う声が聞こえて、少し遠くを見ていた視線を城川くんの顔にうつした。
少し笑ってる…。
ほら、やっぱり魔法みたいだよ。
本当に元気がでてくる。
「城川くん、ありがとう。
わ、わたし…チャンスは逃さないからっ」
「応援してる」
城川くんはひとことそれだけを言うと、去ってしまった。
ありがとう、城川くん。
そう、心の中で何度も呟く。
わたし…頑張るから。


