「…本気で言ってる?」




「もちろんですっ! 城川くんは上手いって聞いたから…!

勝つためにも、迷惑じゃなければ教えてほしいんです…」




「………いいけど?」




「で、ですよね…。
やっぱり無理ですよね……」





めげないって決めたけど断られちゃったら無理だよ…。
自分の力で頑張らなきゃだよね。





「はあ?」





視線を足元に落として、踵を返そうとしたとき。
少し怒ってるのか呆れてるのかよくわからない声が聞こえた。





「え?」




「別に教えてもいいっつってんの。
人の話くれぇ聞けよ……。

なに、教えなくてもいいわけ?
それなら教えないけど」




「え? ……えぇ⁉︎ほ、本当ッ?
お、おお教えてください!」





嘘…教えてくれるの?
よ、よかったー…。





だけどわたしそういえば、男の子…少し苦手だった…。
でも大丈夫だよね…!





「今日は体育着持ってんの?」




「え? あ、持って…ます!」




「つうか敬語やめて。 めんどくさい。

あと、名前は? 俺、あんたの名前知らねぇし」




「う、うん…。 やめるね。

わたしの名前は…瑞姫だよっ。 それで苗字は…「ミズキ、な。 わかった」





名前を聞いてきたから名前を答えて。
苗字は知ってるだろうと思ったけど、言おうとしたら、城川くんはわたしの名前だけを呼んだ。





「…へ? な、ななんで名前で呼ぶの?」




「は? ミズキが名前じゃねぇの?」





ん? ま、まさか…わたしと城川くんが思う“名前”の意味が違う…?





「藤宮瑞姫ですけど…」




「あぁ、そう。

じゃあ…藤宮な」




「う、うん…!」





なんでだろ。
急に苗字で呼ばれると、少し悲しい気持ちになるのは…。