「城川く…っ?」
「瑞姫」
「…っえ? い、いまなんて…?」
下の名前で呼ばれたよね?
なんで……?
胸がすごくドキドキする。
こんなにも近くに城川くんの温度を感じて、わたしのほっぺは火照っていく。
「俺も瑞姫が好き」
いつもの冷たくて迷惑そうな声なんかじゃなくて。
初めて聞いた…、優しくて安心するような低音の声。
「城川…くん…? じ、冗談は…っ」
「本気なんだけど」
「え……」
ありえない。
城川くんがわたしのことを、好きなんて。
わたしの名前を優しく呼ぶのは、本当に城川くん?
「大会前っつーのは、嘘。
大会があるのは来年」
「そ、そうなの…?」
「だから、教えるから」
「……城川くんっ」
「湊」
城川くんは強く言った。
え? な、名前で呼べってこと…?
「み…みなとくん!
ほ、本当に? …同じ気持ちなの?」
「あぁ。
俺は…瑞姫が、好き」
城川くんの口が紡ぐ『好き』という言葉が、耳元で聞こえて。
頭の中で何回も何回もこだまする。
本当なの?
夢じゃないの……?
試合で勝ったときみたいに。
夢が現実になると、頭はついていけない。
それに胸が尋常じゃない速さで…脈を打つ。