勉強会を夜までやっていたからだろう。

皆が帰った後、飛鳥は身支度をするとすぐに寝てしまった。

…僕は眠気なんてないのに…。

暇になってしまった僕は、もう一度参考書を開いてみた。だがどうにも、やる気になれない。こんな受験生でいいのかよ…。

僕はベランダから、星空を見上げた。そんなことをして何になるのかって?…そんなの、知ったことじゃない。

…こんなこと、確か前もあったな…。

何故だろう。後ろから飛鳥が話しかけて来てほしい、と少し期待してしまっている僕がいる。

そんなこと、二度もあるはずないのに。

あれはたまたまだ。多分、本当は飛鳥も初日の出を見たくて、そうしたらたまたまそこに僕がいただけなんだ。

…それが「たまたま」で済まされる話なら、今までの思い出も全て「たまたま」で済まされてしまうんじゃないか?

僕は「たまたま」飛鳥と出会って、「たまたま」同じ部活になって、「たまたま」仲良くなって、「たまたま」好きになって…。

偶然の中に、必然を見つけられずにいた。いや、そもそも必然自体、ここに存在しているのか?

僕は「ないんじゃないか」という考えの方が強かった。

だから、だからこそ僕は、飛鳥との時間を、一分一秒でも大切にしたい。

それは、僕の心の中で揺らぎのないものになっている、数少ないものの一つだった。