部室の前で唖然とする僕の後ろを、どこかのクラスの先生が通り過ぎた。

「あの。」

僕は先生を呼んだ。

「どうした?」
「えっと…文芸部って、何で廃部になったんですか…?」

聞いていながらにして、僕は「答えが返ってこなければいいのに」と思っていた。

答えを聞くのが、素直に怖かった。聞きたくなかった。

でも、答えというものは返ってくるものなのだ。

「文化祭前に、文芸部と映画研究部が絡む事件があっただろう?このことを重く見た上の方々は、この二つの部活を廃部にすることを決めたんだ。」
「…っていうことは、映画研究部も?」
「ああ。廃部だ。」

考えてみれば、当たり前のことだった。

あんな大きな事件が起きたというのに、何もなく部活を続けるのは逆に不自然だ。

「ありがとうございました。」

僕は先生にお辞儀をした。

「…帰るか。」

こんな所でボーっと立っていても、文芸部が復活するわけでもなければ、誰かに会えるというわけでもない。

僕は来た道を戻ろうと、クルリと向きを変えた。その時だった。

「あ…。」

飛鳥と、思いっきり目が合ってしまった。