素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜

「やっぱりね……」

「何がやっぱりなんですか?」

「だって、和君はよくお隣さんの事を話すじゃない? 真琴ちゃんっていったわよね?」

「はあ」

「和君はあの子に気があるんだなって、私は前から気付いてたわ」

「そんな事はないです。ただちょっと、気になるだけで……」

「それを好きって言うんじゃない?」

「そうでしょうか……」


と言いながら、自分でもそうかなと思う。特にあの事があってからは……


「ああ、でもダメか。お隣さんには彼氏がいるもんね?」

「あ……いいえ。時々来てた男は、単なる友達なんだそうです。半年前に誰かと結婚して、それ以降は来てないそうです」

「そうなんだ? だったら何も問題ないんじゃない?」

「そんな事ないですよ。彼女は好みがうるさいというか、要するにイケメンじゃないと好きになれないそうで、俺なんかじゃ……」


そうさ。

ひょんな事から俺は真琴を抱いたが、あれはその場の勢いと、彼女はちょうど処女を捨てたいと思ってただけで、つまり相手は誰でもよかったのだと思う。たまたま俺がそこに居たってだけの事で。裕子さんが、浮気の相手は誰でもよかったのと同じで……


ああ、そう考えると、俺って本当に情けないよなあ。


「イケメンじゃないとって、お隣の真琴ちゃんが言ったの?」

「はい」

「そうなんだ? でも、和君だってイケメンでしょ?」

「…………はあ?」


びっくりした。自慢じゃないが、俺は生まれてこの方、イケメンなんて人から言われた事はないし、自分で思った事もない。裕子さんは、俺をからかうつもりなんだろうか……