素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜

裕子さんは、“どうよ?”とでも言いたげなドヤ顏で俺を見るのだが……


「誰の赤ちゃんですか? あ、ひょっとして、俺の!?」


毎回避妊はしている。しかし100パーセントではないらしい。例えば、小さな穴が開いていたりとか……

裕子さんは俺の子どもを身ごもってしまったのだろうか。だとしたら、俺はどうすれば……

俺は顔から血の気が引く思いだったのだが、


「まさか。あの人に決まってるでしょ?」

「へ?」


俺の赤ちゃんではないそうで、それはホッとしたのだが、兄貴の赤ちゃんって、それは……


「無理なんじゃ……」


兄貴は車に跳ねられて以来、あっちの方は不能のはずだ。


「人工受精という手があるのよ」

「人工……?」

「そう。あの人にはまだ言ってないけどね。今日、というか今、決めたばかりだから」

「そうなんですか。兄貴にとっては有り難いと思うけど、裕子さんはそれでいいんですか?」

「今ごろ“裕子”って言うのね?」

「あ、すみません。義姉さん……」

「もちろんよ。私だって子どもは欲しいもの……」