素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜

「私があの人と別れても?」

「えっ?」


突如裕子さんが放った言葉は、全く俺の想定外だった。“別れる”とは、もちろん離婚という事だろう。

兄貴と離婚してまでも俺との関係を続けたいという事だろうか。という事は、裕子さんは俺の事を……?


「そんな困った顔しないでよ。冗談なんだから……」

「冗談なんですか?」

「そうよ?」


なんだ……

でも、当たり前だよな。俺みたいな男に裕子さんが、なんてあり得ないもんな。危うく間に受けるところだった。


「私はあの人を愛してるし、今の境遇を失いたくないもの……」


それはそうだろうと思う。今は阿部家の若奥様で、いずれは院長夫人だもんな。


「わかったわ。私達の関係は今日で終わりにしましょ?」


裕子さんは、さっきまでとは一転し、サバサバした感じでそう言った。顔に笑顔さえ浮かべながら。

俺はそれでひとまずホッとしたものの、新たな不安が沸き起こった。それは、俺との関係をやめても、裕子さんは他の男と浮気をするんじゃないか、という不安、あるいは疑惑だ。

裕子さんの様子が変わったのは、その事に考えが至ったからではなかろうか……