素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜

「そうですね……。兄貴が俺に何て言ったか、有りのままに話しますね」


それまでは裕子さんにどこまで話すべきか迷っていたが、全てを有りのままに話そうと俺は心に決めた。おそらく兄貴は、俺にそうしてほしかったのだろうと、思えてきたから。


「兄貴は、だいぶ前から気付いていたそうです。初めは悔しくて悲しかったけど、すぐに仕方ないと思ったそうです。自分はこんな体だから、仕方ないと……」


俺はそこで言葉を切り、裕子さんの反応を見たが、裕子さんにこれといった反応はなかった。そんな兄貴の気持ちを、裕子さんは知っていたのだろうか……


「俺には理解出来なかったです。そりゃあ、俺と兄貴では状況が違いますけど、だとしても愛する妻が浮気して、それを知った時、仕方ないと諦めるなんて俺には無理です。だから俺は思ったんです。兄貴は、本当は義姉さんの事を愛してないんだろうって……」


と俺が言うと、裕子さんはようやく「えっ?」という感じで反応した。そして、


「それは違うと思うわ」

と、静かな声で言った。


「そうですね。兄貴は義姉さんを愛してるみたいです。兄貴はこう言いました。体だけならいいと。心さえ奪われなければ、それでいいんだ、と……」